カロリーを減らしても痩せないのはなぜ?ミネソタ飢餓実験から分かる身体の仕組み

カロリーを減らしても痩せないのはなぜ?ミネソタ飢餓実験から分かる身体の仕組み

「夜ご飯を抜いているのに痩せない…」

  • 夜ご飯を抜いている
  • 昼はサラダだけ
  • お菓子も我慢している

それなのに体重が思うように落ちない。

「食べる量を減らせば痩せるんじゃないの?」

そう疑問に思ったことはありませんか?

もちろん、体脂肪は摂取カロリーより消費カロリーが多い状態(カロリー赤字)が続けば減少します。

しかし、人間の身体は単純な計算式だけでは動いていません。

人の身体には、食事量が少ない状態に適応して消費エネルギーを抑える仕組みがあります。

この仕組みを裏付ける代表的な研究として知られているのが、「ミネソタ飢餓実験」です。


【目次】

  1. ミネソタ飢餓実験とは?
  2. 実験の内容
     2-1. コントロール期間(約12週間)
     2-2. 半飢餓期間(24週間)
     2-3. 回復食(リフィーディング)
  3. 身体には何が起こったのか
     3-1. 体重は平均約24%減少した
     3-2. 安静時のエネルギー消費量が大きく低下した
      3-2-1. 代謝適応とは
     3-3. 心拍数や体温、筋力などの身体機能も低下した
     3-4. 食べ物への強い執着が現れた
     3-5. 気分や対人関係にも影響が現れた
     3-6. 回復食を始めても、すぐには元に戻らなかった
  4. ミネソタ飢餓実験から分かること
     4-1. 注意しておきたいこと
  5. この研究から現代のダイエットで学べること
  6. どうすれば健康的に痩せられるのか
  7. 重要なのは「何を減らすか」ではなく「どうバランスを整えるか」
  8. 参考文献

1.ミネソタ飢餓実験とは?

ミネソタ飢餓実験は、1944年にアメリカ・ミネソタ大学でAncel Keys博士らによって行われた研究です。

第二次世界大戦後、ヨーロッパでは飢餓に苦しむ人々が数多く存在していました。

当時は、

「飢餓状態の人に、どのような食事を与えれば安全に回復できるのか」

という科学的なデータがほとんどありませんでした。

そこで36名の健康な男性ボランティアを対象に、長期間の半飢餓状態と回復食(リフィーディング)を観察する実験が行われました。


2.実験の内容

実験は約1年間にわたって行われました。

① コントロール期間(約12週間)

まずは約3か月間、健康な状態を維持するため約3,200kcalの食事を摂取しました。

この期間に基礎代謝や体組成、筋力、精神状態などを詳しく測定しました。

② 半飢餓期間(24週間)

続く約6か月間は摂取カロリーを約半分まで制限し、毎週約35km相当の歩行も義務付けられました。

現在のダイエットで言えば、

  • 夜ご飯だけ食べない
  • 極端な糖質制限
  • 1000〜1500kcal程度の生活

を半年間続けるような非常に厳しい内容です。

③ 回復食(リフィーディング)

半飢餓期間終了後は、摂取カロリーを段階的に増やし、どの程度のエネルギー摂取で身体が回復するのかを検証しました。

ミネソタ飢餓実験の流れをまとめた図。約3か月の準備期間、24週間の半飢餓期間、回復食(リフィーディング)期間と、身体や精神への変化を示したインフォグラフィック。
ミネソタ飢餓実験では、準備期間・半飢餓期間・回復食(リフィーディング)を通して、長期間のカロリー制限が身体や精神に及ぼす影響が詳しく調査されました。

3.身体には何が起こったのか

24週間の半飢餓期間を経て、被験者には体重減少だけでなく、代謝・身体機能・行動・精神状態にまで幅広い変化が現れました。

ここで重要なのは、これらが単なる「空腹感」ではなく、長期間にわたってエネルギーが不足した身体に起こる生理的な適応だったという点です。

① 体重は平均約24%減少した

被験者は、半飢餓期間の6か月間で、平均して実験前の体重の約24%を失いました。

体重60kgの人に置き換えると、約14kg減少する計算です。

ただし、減少したのは体脂肪だけではありません。脂肪とともに、筋肉などを含む除脂肪組織も失われました。

そのため、体重計の数字は大きく減っていても、必ずしも健康的に「脂肪だけを落とした」状態ではありませんでした。


② 安静時のエネルギー消費量が大きく低下した

半飢餓期間の終了時には、安静時エネルギー消費量が実験前より約39%、1日当たり約600kcal低下していたと後年の再解析で報告されています。

この低下には、体重や筋肉などの組織が減った影響も含まれます。

身体が小さくなれば、生命を維持するために必要なエネルギーも少なくなるため、消費カロリーが下がること自体は自然な反応です。

しかし、低下した約600kcalのうち約200kcalは、体重や身体組成の変化だけでは説明できませんでした。

つまり身体は、単に軽くなったから消費エネルギーが減っただけではなく、現在の身体の大きさから予測される以上にエネルギー消費を抑えていたと考えられます。

このような変化を、現在では**代謝適応(Adaptive Thermogenesis)**と呼びます。

代謝適応とは

減量すると、身体が小さくなるため消費カロリーは低下します。

代謝適応とは、それに加えて、身体がエネルギー不足から身を守るために、予測される水準よりもさらに消費エネルギーを抑える反応です。

そのため、ダイエット開始時と同じ食事を続けていても、減量が進むにつれて体重の減少速度が遅くなることがあります。

ただし、代謝が完全に「壊れる」わけでも、食べていないのに脂肪が増えるわけでもありません。

消費カロリーの低下によって、開始時よりもカロリー赤字が小さくなり、体重が落ちる速度が遅くなると考えるのが適切です。


③ 心拍数や体温、筋力などの身体機能も低下した

半飢餓期間中には、次のような身体的変化も報告されました。

  • 心拍数の低下
  • 血圧の低下
  • 体温の低下
  • 筋力と持久力の低下
  • 疲労感や脱力感
  • 貧血
  • めまい
  • むくみ(浮腫)
  • 性欲の低下

歩行や階段の昇降など、日常的な動作にも負担を感じる被験者が現れました。

これは、身体が限られたエネルギーを生命維持に優先して使い、それ以外の機能への消費を抑えた結果と考えられます。

また、疲労によって無意識の活動量が減れば、運動以外の消費カロリーも低下します。

普段なら歩いていた距離を歩かなくなる、座っている時間が増える、動作がゆっくりになるといった変化です。

つまり、食事制限中の消費カロリー低下は、安静時代謝だけではなく、日常生活で自然に使うエネルギーが減ることによっても起こります。


④ 食べ物への強い執着が現れた

ミネソタ飢餓実験で特に有名なのが、食べ物に対する行動の変化です。

被験者には、

  • 食べ物のことを長時間考える
  • レシピや料理本を繰り返し眺める
  • 食事について話す時間が増える
  • 食事を非常にゆっくり食べる
  • 食器をなめる
  • 食品を細かく分けて食べる
  • ガムやコーヒー、水を大量に摂る

といった変化が見られました。

これは単に「食べることが好きになった」のではありません。

長期的なエネルギー不足に対し、身体と脳が食物の獲得を優先するようになった結果と考えられます。

現代のダイエットでも、極端な食事制限を続けた結果、

「一日中食べ物のことを考えてしまう」
「我慢した反動で食べ過ぎてしまう」

ということがあります。

これをすべて意志の弱さとして片付けることはできません。強い食欲や食べ物への執着は、エネルギー不足に対する生理的な反応でもあるからです。


⑤ 気分や対人関係にも影響が現れた

身体だけでなく、精神面や社会生活にも変化が現れました。

報告されている主な変化には、

  • イライラしやすくなる
  • 不安や抑うつ傾向
  • 無気力
  • 社交性の低下
  • 他人への関心の低下
  • 集中しにくくなる
  • 判断や理解に自信が持てなくなる
  • 性的関心の低下

などがあります。

一方で、本人たちは集中力や判断力の低下を訴えましたが、すべての客観的な認知機能検査で明確な低下が確認されたわけではありません。


⑥ 回復食を始めても、すぐには元に戻らなかった

24週間の半飢餓期間が終了した後、被験者には段階的に摂取カロリーを増やす回復期間が設けられました。

しかし、食事量を少し増やしただけでは、

  • 強い空腹感
  • 疲労感
  • 無気力
  • 食べ物への執着
  • 身体機能の低下

などはすぐには改善しませんでした。

また、たんぱく質やビタミンを追加するだけでは、回復を大きく早める効果は確認されず、回復には十分な総エネルギー摂取が必要であることが示されました。

さらに、食事を自由に食べられるようになった後には、非常に多くの量を食べる被験者もいました。

体重が戻り始めても、食欲や満腹感がすぐ正常に戻るとは限らなかったのです。

後年の研究では、減量後の回復過程において、除脂肪組織よりも体脂肪の回復が先行する可能性が検討されています。これは、極端な減量後に体脂肪を取り戻しやすくなる仕組みを考えるうえで、重要な知見とされています。

ミネソタ飢餓実験で半飢餓状態となった被験者に起きた身体と精神の変化をまとめた図。代謝の低下、体重減少、筋力低下、精神面の変化などを解説したインフォグラフィック。
ミネソタ飢餓実験では、長期間のカロリー制限により、代謝・筋力・体重だけでなく、精神面や日常生活にも幅広い影響が確認されました。

4.ミネソタ飢餓実験から分かること

この実験から分かるのは、食事制限をすれば一切痩せなくなる、ということではありません。

実際、被験者の体重は大きく減少しました。

しかし、極端なエネルギー不足が長期間続くと、

  • 安静時の消費エネルギーが低下する
  • 日常生活の活動量が減る
  • 筋力や体力が低下する
  • 食欲や食べ物への執着が強くなる
  • 気分や社会生活にも影響が出る
  • 食事を戻してもすぐには回復しない

という代償が生じることが示されました。

つまり、体重を減らせることと、健康的で継続可能な方法で痩せられることは別の問題なのです。

※注意しておきたいこと

ミネソタ飢餓実験は、一般的なダイエットを再現した研究ではありません。

被験者は約24週間にわたり、必要エネルギーを大きく下回る食事制限と毎週約35kmの歩行を続けるという、半飢餓状態に置かれました。

そのため、この研究で見られた代謝や身体機能、精神面の変化が、すべてのダイエットで同じ程度に起こるわけではありません。

しかし、この研究は**「長期間にわたる極端なエネルギー不足に対して、人間の身体がどのように適応するのか」**を理解するうえで、現在でも非常に重要な研究とされています。

現代のダイエットにおいても、過度な食事制限を長期間続けることは、身体への負担や継続の難しさにつながる可能性があるため注意が必要です。

なお、この研究は健康な若年男性を対象に実施されたものであり、女性や高齢者、肥満のある方など、すべての人に同じ結果が当てはまるとは限りません。

5.この研究から現代のダイエットで学べること

ミネソタ飢餓実験は、

「カロリー制限は意味がない」

という研究ではありません。

むしろ、

極端なカロリー制限を長期間続けると、身体は代謝を低下させ、飢餓から身を守ろうとする

ことを示した研究です。

だからこそ、

  • 夜だけ食べない
  • サラダだけで生活する
  • 極端な糖質制限
  • 1000kcal以下の生活

のような方法は、短期間で体重が減っても長く続けることは難しく、健康面への影響も無視できません。


6.どうすれば健康的に痩せられるのか

ここまで読んで、

「食事を減らすだけではダメなのは分かった。でも、結局どうすれば痩せられるの?」

と思った方もいるでしょう。

ダイエットで最も重要なのは、ただカロリーを減らすことではなく、必要な栄養素を確保しながら適度なカロリー赤字を作ることです。

そのために意識したいのが、PFCバランスです。


PFCバランスとは?

PFCとは三大栄養素の頭文字です。

  • P(Protein)=たんぱく質
  • F(Fat)=脂質
  • C(Carbohydrate)=炭水化物

同じ2,000kcalでも、これらの割合によって身体の変化は大きく変わります。

PFCバランスの目安と、たんぱく質・脂質・炭水化物それぞれの役割を示したインフォグラフィック。
PFCバランスとは、たんぱく質(P)・脂質(F)・炭水化物(C)の摂取割合のことです。ダイエットではカロリーだけでなく、栄養バランスを整えることも重要です。

ダイエット中に最も重要なのはたんぱく質

たんぱく質は筋肉や皮膚、内臓など身体をつくる材料です。

不足すると筋肉量が減りやすくなり、基礎代謝の低下につながる可能性があります。

また、食後の満腹感も得られやすいため、食べ過ぎの予防にも役立ちます。

テレビやSNSなどでタンパク質の重要性について触れる機会が増え意識的にタンパク質を摂っていると仰る方が多いですが、経験上、自身のタンパク質摂取量を過大評価している方が多いと感じます。

女性では、たんぱく質の多くを植物性食品だけで補っているケースも少なくありません。植物性たんぱく質も有用ですが、食品によって含まれる必須アミノ酸の割合や、1食当たりのたんぱく質量は異なります。肉・魚・卵・乳製品や大豆製品など、複数の食品を組み合わせながら必要量を確保することが大切です。


脂質も必要な栄養素

「脂質は太るからできるだけ減らした方がいい」

と思われがちですが、脂質はホルモンの材料となり、細胞膜や神経の働きにも欠かせません。

極端に制限すると、体調不良やホルモンバランスの乱れにつながることがあります。


炭水化物は悪者ではない

炭水化物は身体や脳を動かすための重要なエネルギー源です。

極端に減らすと、トレーニングのパフォーマンスが落ちたり、疲れやすくなったりすることがあります。

ダイエットでは「ゼロにする」のではなく、自分に合った量を摂取することが大切です。


7.重要なのは「何を減らすか」ではなく「どうバランスを整えるか」

ダイエットは、

  • 夜ご飯を抜く
  • 炭水化物をゼロにする
  • サラダだけ食べる

といった極端な方法では長続きしません。

PFCバランスを整えながら、適度なカロリー赤字を作ることが、健康的でリバウンドしにくいダイエットにつながります。

具体的な食品選択やPFCバランスの考え方については次のダイエットの記事でご紹介します。

ダイエットは「食べないこと」が成功の近道ではありません。

あなたに必要な摂取カロリーやPFCバランスは年齢・体格・生活習慣によって異なります。

α PERSONAL TRAINING LABでは、一人ひとりに合わせた食事指導とトレーニングをご提案しています。

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α Personal Training LABが目指すもの

α Personal Training LABが提供するのは単なる筋トレ、ダイエット指導だけではありません。
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α Personal Training LABは本物志向の方に京都市中京区・烏丸御池で最高峰の運動指導・運動療法を提供いたします。


この記事を書いた人

丹下 翔太

・ボディメイク・姿勢改善・リハビリ・スポーツパフォーマンス指導

・α Personal Training LAB 代表

・NSCA認定パーソナルトレーナー

・AZCARE Master Provider

・Synthesis認定ピラティス

・BPA認定パフォーマンススペシャリスト

α Personal Training LAB代表 丹下翔太

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8.参考文献

  • Keys A, Brožek J, Henschel A, et al. The Biology of Human Starvation. University of Minnesota Press, 1950.
  • Kalm LM, Semba RD. They Starved So That Others Be Better Fed. Journal of Nutrition, 2005.
  • Müller MJ, et al. Metabolic adaptation to caloric restriction and subsequent refeeding. American Journal of Clinical Nutrition, 2015.