ウエイトトレーニング前にマットピラティスで体幹と動作を整える様子

ウエイトトレーニング前にピラティスを取り入れるメリット|動作と体幹を整える3つのポイント

京都・烏丸御池にあるパーソナルトレーニングジムα Personal Training LABでは、筋力向上を目的としたウエイトトレーニングの前にも、ピラティスの考え方を取り入れたエクササイズを活用しています。

スクワットやベンチプレスなどで重い重量を扱おうとすると、「身体をできるだけ強く固めた方が力を出せる」と考える方は少なくありません。

では、全身の筋肉をできるだけ強く緊張させれば、それだけ重たい重量を持ち上げられるのでしょうか?

必ずしもそうではありません。

ウエイトトレーニングで重要なのは、すべての筋肉を一様に緊張させることではなく、動作に合わせて必要な筋肉が適切に働くことです。

適切な「関節の位置」を保ちながら、必要な範囲で身体を動かし、その状態で力を発揮すること。

そのため当店では、ウエイトトレーニングの前にピラティスの考え方を取り入れた低強度のマットエクササイズを行うことがあります。

目的は、ピラティスそのものを上達させることではありません。

これから行うウエイトトレーニングで、身体を動かしやすい状態をつくることです。

トレーニング前にピラティスエクササイズを取り入れる主な目的は次の3つです。

  1. 関節を丁寧にできるだけ大きく動かし、自分の身体の位置や動きを感じやすくする
  2. 脊柱と体幹をコントロールしやすい状態をつくる
  3. 身体を安定させる筋肉を働かせ、ウエイトトレーニングに備える

この記事では、それぞれをできるだけ専門用語を使わずに解説します。


1.関節を動かすことで「自分の身体の位置」を確認する

身体は筋肉だけで動いているわけではない

例えば目を閉じた状態でも、自分の肘が曲がっているのか伸びているのか、ある程度判断することができます。

これは、筋肉や腱、関節などから脳へ送られる固有感覚(proprioception)と呼ばれる情報が関係しています。

私たちが身体を動かすとき、脳はこうした感覚情報をもとに、

「今、腕はどこにあるのか」

「股関節はどのくらい曲がっているのか」

「身体はどちらに傾いているのか」

といった身体の状態を把握しながら運動を調整しています。

こうした自分自身の身体について脳内に形成されるイメージは、専門的にはボディスキーマ(身体図式)などと表現されます。

いきなり重いものを持つ前に「動きを確認する」

ここで重要なのは、単純に関節を大きく動かせば筋力が上がる、ということではありません。

関節を広い範囲で動かすと、動作に伴って筋肉の長さや関節の位置も変化し、それぞれの位置で異なる感覚情報が脳へ送られます。
こうしたさまざまな身体位置を経験することは、自分の身体がどこにあり、どのように動いているのかを把握するための感覚情報になります。

低い負荷の中で関節を丁寧に動かすことで、

  • どこまで動くのか
  • どこで動きにくくなるのか
  • 左右で違いがないか
  • どのような姿勢なら動きやすいか

といった情報を確認しやすくなります。

例えばスクワットを行う前なら、股関節・膝関節・足関節を低負荷で動かしておくことで、その日の身体の状態を確認できます。

そのうえで負荷を加える方が、いきなりバーベルを担ぐよりも動作を調整しやすくなります。

実際、固有感覚を目的としたトレーニングについては、固有感覚だけでなく運動パフォーマンスの改善につながる可能性が報告されています。

また、健康な若年者を対象とした研究では、6週間のマットピラティスによって体幹の固有感覚と体幹筋持久力が改善したことも報告されています。

ただし、これは「トレーニング直前に数分ピラティスをすれば、すぐにボディスキーマが改善して筋力が上がる」ことを証明したものではありません。

当店では、あくまでその日の身体を確認し、これから行う動作に備えるための一つの方法として利用します。


2.脊柱を長く保つ意識が、体幹を使う準備になる

ピラティスでよく使われる「エロンゲーション」とは?

ピラティスでは、脊柱を上下方向へ長く保つような意識をエロンゲーション(elongation)と表現することがあります。

少し難しく聞こえますが、

「胸を無理に張る」

「背筋を力いっぱい伸ばす」

という意味ではありません。

頭を上から引っ張られているような感覚で、脊柱の長さを保ちながら姿勢をコントロールするイメージです。

ウエイトトレーニングでも脊柱のコントロールは重要

スクワット、デッドリフト、ロウイング、ショルダープレスなど、多くのウエイトトレーニングでは手足だけではなく、体幹のコントロールが必要になります。

例えばスクワットで、

  • 胸だけを過剰に張る
  • 腰を必要以上に反らせる
  • 重量に負けて体幹が大きく崩れる

といった状態になると、本来狙いたい動作とは異なる動きになることがあります。

そこで、比較的負荷の低い段階で、

「脊柱をどの位置に保つのか」
「その状態で手足を動かせるか」

を確認してからウエイトトレーニングへ移ります。

ピラティスに関する研究では、マット上で行うエクササイズでも多裂筋や腹斜筋などの体幹筋が活動し、エクササイズによって異なる筋活動パターンが生じることが確認されています。

一方で、

「エロンゲーションを行えば抗重力筋の活動が上がり、その結果として最大筋力が必ず向上する」

とまで断定できる研究は十分ではありません。

そのため、当店ではエロンゲーションを「筋力を直接高める方法」ではなく、ウエイトトレーニング中に必要となる姿勢と体幹のコントロールを準備する方法として考えています。


3.身体を安定させる筋肉を働かせ、動作の土台をつくる

大きな筋肉だけでは関節は安定しない

ウエイトトレーニングというと、

  • 大胸筋
  • 広背筋
  • 大殿筋
  • 大腿四頭筋

など、大きな力を発揮する筋肉に目が向きやすくなります。

もちろん、これらは非常に重要です。

しかし、身体を安定させながら力を発揮するためには、それだけではありません。

体幹であれば、多裂筋や腹横筋・内腹斜筋などを含む筋群も動作に関わります。

これらは単独で働くというよりも、周囲のさまざまな筋肉と協調しながら、脊柱や骨盤の動きをコントロールしています。

「関節を固める」のではなく、動ける状態で安定させる

トレーニングにおける安定性というと、身体をガチガチに固めることをイメージするかもしれません。

しかし、本来必要なのは、

動かすべきところは動かしながら、必要な部分をコントロールできること

です。

ピラティスのマットエクササイズでは、比較的低い負荷の中で手足を動かしながら体幹をコントロールする種目があります。

実際に筋電図を用いた研究でも、デッドバグやシングルレッグストレッチなどのマットピラティスで、腹斜筋や多裂筋を含む体幹筋の活動が確認されています。

こうしたエクササイズをウエイトトレーニング前に使う目的は、体幹を疲労させるほど追い込むことではありません。

「これから負荷をかけても、この姿勢を保てるか」を低負荷で確認することです。

その後、

マットエクササイズ

自重運動

軽い負荷でのウエイトトレーニング

メインセット

というように、段階的に負荷を上げていきます。

当店が、いきなり重い重量を扱うのではなく、仰向けや四つ這いなどの低強度エクササイズからトレーニングを始める理由については、「筋トレを頑張っても効果が出ない理由|寝た姿勢から始める理由」でも詳しく解説しています。


ピラティスをすればウエイトトレーニングの筋力は上がる?

ここは誤解されやすいところです。

現時点では、

「ウエイトトレーニング直前にピラティスを行えば、その直後の最大筋力が向上する」

と断定できるだけの研究はありません。

実際に2024年に発表された研究では、トレーニング経験のある若年成人102名を対象に、静的ストレッチ、ピラティスストレッチ、何もしない条件を比較しています。

その結果、ピラティスストレッチを行ったからといって、その後の膝の筋力が有意に高くなったわけではありませんでした。

一方で、筋力を低下させたわけでもありません。

つまりピラティスをトレーニング前に取り入れる意味は、

直接的に筋力を増幅することよりも、これから行う運動に合わせて身体を準備すること

にあると考える方が適切です。

一般的なウォームアップについても、身体を温めることは素早い力発揮やパワーには好影響を与える可能性がありますが、最大筋力そのものへの効果は必ずしも同じではありません。

「ウォームアップをしたから力が強くなる」という単純な話ではなく、目的に合わせて内容を選択する必要があります。


まとめ|ピラティスは「筋トレ前の身体の準備」として活用できる

ウエイトトレーニング前にピラティスの考え方を取り入れた低強度運動を行う目的は、単純に身体を柔らかくしたり、直後の筋力を高めたりすることではありません。

主な目的は、

  1. 関節を丁寧に動かし、身体の位置や動きを確認する
  2. 脊柱と体幹をコントロールしやすい状態をつくる
  3. 安定性に関わる筋肉を働かせ、その後のトレーニングに備える

ことです。

そして最も重要なのは、ピラティスそのものを行うことではなく、その後に行うウエイトトレーニングにつながっているかどうかです。

身体の状態を確認する

必要な動きを準備する

軽い負荷でフォームを確認する

適切な負荷でウエイトトレーニングを行う

この流れを一人ひとりに合わせて組み立てることで、安全性とトレーニングの質の両方を高めることを目指します。


この記事を書いた人

丹下 翔太

・ボディメイク・姿勢改善・リハビリ・スポーツパフォーマンス指導

・α Personal Training LAB 代表

・NSCA認定パーソナルトレーナー

・AZCARE Master Provider

・Synthesis認定ピラティス

・BPA認定パフォーマンススペシャリスト

α Personal Training LAB代表 丹下翔太

店舗情報

α Personal Training LAB

〒604-8136
京都府京都市中京区梅忠町20-1
烏丸アネックス3F

営業時間

  • 平日10:00〜22:00
  • 土日10:00〜19:00
  • 定休日 毎週火曜日

参考文献

  1. Suner-Keklik S, et al. An online pilates exercise program is effective on proprioception and core muscle endurance in a randomized controlled trial. Ir J Med Sci. 2022.
  2. Proske U, Gandevia SC. The proprioceptive senses: their roles in signaling body shape, body position and movement, and muscle force. Physiol Rev. 2012.
  3. Pereira ILR, et al. Trunk Muscle EMG During Intermediate Pilates Mat Exercises in Beginner Healthy and Chronic Low Back Pain Individuals. J Manipulative Physiol Ther. 2017.
  4. Dos Reis AL, et al. Acute effect of static stretching and pilates stretching on the concentric muscle strength of the knee extensors and flexors. J Bodyw Mov Ther. 2024.
  5. Wilson CJ, et al. The effect of muscle warm-up on voluntary and evoked force-time parameters: A systematic review and meta-analysis with meta-regression. J Sport Health Sci. 2025.